スマホの撮影で失敗しないために part4

スマホでの撮影で失敗しないためにの part4 です。

 今回はスマホで背景をボカした写真についてお話します。 

 そこでまず初めに知っておいていただきたいことをお伝えします。

「スマホではデジタル一眼のような背景をボカしたりハッキリさせたりを調整しながら撮影することはできません」なので使いどころを考えて「苦手なところより得意なところを生かす」撮影を目指しましょう。

 

 スマホのカメラで背景がボケない理由は大きく3つあります。

 まず、スマホに搭載されているカメラの撮像素子はとても小さいので、デジタル一眼のフルサイズと比べると圧倒的に背景がボケません。

 次にスマホのレンズは広く写る広角レンズが多く使われていますが、広角レンズの持つ光学的特性から背景をボカすのはとても苦手です。

 この2つの理由からスマホのカメラは特別な何かをしなくても背景までハッキリ写ってしまいます。

 そして決定的な3つ目の理由はスマホのカメラは一般的なカメラのような絞り調整機能を持っていません。
そのため絞りを変えて背景のボケを調整することができません。(一部の機種では絞りを2段階に変えられるものもあります)

 スマホの広告には「背景のボケがキレイ」や「背景をハッキリさせたりボカしたりの調整ができます」などの表記があります。

確かに背景をボカしたキレイなサンプルがカタログやウェブサイトに載っていますが、その方法はスマホのカメラに備わった特別な画像処理による効果で、一般のカメラで撮影した写真の背景ボケとは仕組みが全く違います。

(この回では簡単に「広角レンズは背景がボケにくい」「撮像素子が大きいほどボケやすい」くらいに覚えておいてください)

 

 そんなスマホのカメラですが、だからと言って全くボケないかと言えばそうでもありません。被写体をカメラにかなり近づけて背景と離せばボケます。例えば写真のような小さい被写体を大きく写すような場合であれば背景はそれなりにボケます。

ピントの位置を手前に持ってくることで、本来であればハッキリ写ってしまう範囲に背景のものを入れないと言えば少しは解りやすいでしょうか。このように小さい被写体であればスマホのカメラでも背景をボカすことは可能です。なので小さい被写体などをイメージイカットで撮影する場合には活用してみましょう。

 ところが被写体が人物程度の大きさになってくるとスマホのカメラでは背景が格段にボケなくなってきます。先にも触れましたがスマホのカメラの写真は「ピントはあっていないけれど背景のボケ具合が少ないためにパッと見では、すべてがハッキリ写っているような写真」になってしまうからです。

 

 その避けようのない効果をなんとかするためにスマホメーカーは手を変え品を変え対応策を出しています。

例えば2つのレンズを使って手前の被写体と背景のピントの合っている位置を変えて同時に撮影、2カットを合成して背景がボケた写真を作ったりしています。

 また1つのレンズでも被写体を自動的に選択して切り離し、改めてボカシ処理をした背景と合成して背景がボケているような写真に仕上げたりしています。このような最先端の画像処理技術は、いつも完ぺきとは言えないようで、複雑な形状の被写体だと不自然な仕上がりになることも多くみられます。また最新機種でないと使用できない処理も多く含まれていますので誰もが手軽に、とはいかないのが現実でしょう。

 では今後、背景のボケ問題はどうなるのでしょうか。

 機械的な絞り調整機能を搭載したとしても、スマホカメラの背景のボケに関しては今後の画像処理技術の進歩に期待するしかありません。したがって、ここからの内容もスマホも背景のボケを調整できる機能を持った機種を想定しました。

 

 では今現在で背景をキレイにボカすためのスキルをお伝えします。

 要点は「被写体の明るさや色味のトーンと背景のトーンがかけ離れているほど、ボカシの自動処理はうまくいきやすい」ということです。

 

 ハッキリ見せたい被写体とボカしたい背景の距離を離すのは基本ですが、と同時に同じような色、同じような明るさの背景を避けることが重要になってきます。

 背景のボカシ処理の仕組みは、被写体の背景からの分離と再合成です。ダブルレンズカメラの場合は被写体と背景を撮影するカメラが別になってはいますが、片方の写真から被写体を切り抜いて別の写真に再合成することに違いはありません。つまりダブルレンズカメラでもシングルレンズカメラでもメインになる被写体の切り抜き精度が高くないと仕上がりが破たんすることを意味します。サンプルでも比較していますが、背景が暗い緑の写真のように服装と背景のトーンが似ているとエラーを起こしやすくなります。

 

 またポーズも重要です。サンプルの写真では脇の下の空間が被写体と同一と誤認されてエラーを起こすことがあります。

 同様の例として、春先に多くの桜の写真を目にする機会が増えますが、背景をボカすようなモードで撮影したけれど、枝から透けて見えている背景だけが処理から抜け落ちて、部分的に背景がハッキリしてしまっているような写真を見たことがあります。

 このように被写体のポーズや形状を良く見て観察してから撮影する場所やシチュエーションを考えましょう。

 

 今後もスマホのカメラの進化が止まることはありません。しかし手軽に持ち運べる利点を放棄しない限り、一般的なカメラと同じような写真が撮れるようにならないことも事実です。それを踏まえてスマホのカメラとの上手な付き合い方をお伝えします。

 

「スマホのカメラで背景をボカしたいときは割り切って考える!」

 

 できないことを無理やりやっても、決して良い結果は生まれません。

 雑誌で見るような背景がキレイにボケた写真が撮りたいときは、迷わずにデジタル一眼カメラを手にしましょう。望遠レンズを着けたデジタル一眼カメラでチャレンジすることをお勧めします。

 もしスマホしか手元にない場合は、ある程度のレベルまでで諦めて多くを求めないことです。

 また業務で必要な場合は、これも迷わずにプロに依頼しましょう。希望したイメージに沿った写真が納品されることでしょう。

 しかし「扱いが小さい」「予算がない」などの場合は、使う場所と大きさを考えて割り切って使えば十分に使用に耐えられます。高望みしないで、ジャストフィットという意味での適当に使ってみてください。

 

次回はスマホのカメラが得意な部分に関してお伝えします。